ウィッグの髪が抜ける原因と対処法

ウィッグやヘアリプレースメントシステム(HRS)をご利用のお客様から、「思ってたよりも髪が抜け落ちるのが早く、長持ちしない」という相談をいただくことがあります。

ウィッグを使用していて、少々の髪が抜け落ちるのは普通のことです。
しかし、一度にどっさりと抜け落ちるという場合は、なにがしかの原因と問題点が隠れています。

「抜け毛」問題の状況を3つに分けて、それぞれの原因を見ていきましょう。

1. ベースの素材や部位に関係なく、まんべんなく抜ける(または切れる)

抜け毛、または切れ毛が起きる場所が一箇所に固まっておらずウィッグベース全体に起きている場合は、髪自体が傷んでしまっていることが原因です。

頻繁で乱暴なブラッシング、無理にウィッグを頭皮から剥がすことによる結び目やベースのダメージ、出荷時に染色やパーマがなされている髪にさらにブリーチをしたなど、いろいろな要因が考えられます。

取り扱い方だけでなく、元々の人毛の質の問題かもしれません。
ストック品のHRS(ヘアリプレースメントシステム)や男性用ウィッグに使用されているノーマルインディアンヘアーは傷みが早いためこのような事態を招きやすい、と言えます。

この記事の一番下に、日常のケアで気をつけていただきたいことを箇条書きにしますので、そちらもご参照ください。

2. 特定のベースの素材にだけ、抜け毛が発生する

もし、抜け毛がレース部分やモノベースの部位にだけ発生するのであれば、おそらくは「結び目が解ける」ことが原因の一つです。

結び目をブリーチ剤で脱色すると、結び目部分の髪が傷んで解けやすくなります。また、剥がす時と、ベースからテープやグルー(糊、接着剤)を落とす際に結び目ごと無理な力で引っ張って髪を抜いてしまっている、ということも考えられます。

ウィッグやHRS(ヘアリプレースメントシステム)をテープやグルーで固定している方は、剥がす際に無理な力がかからないよう、たっぷりとリムーバーを使いながらゆっくり優しく頭皮から剥がすようにしてください。
また、剥がしたHRSからテープやグルーの残りを取る際にも、ベースに無理な負担がかからないよう、適切なリムーバーと専用のシャンプーをお使いください。

ポリウレタン(PU)でできたベース部分(縁だけがPUのこともよくあります)だけが抜けるという場合は、取り扱いがほんの少し乱暴なのかもしれません。
PUの部分はレースやモノベースと違って髪を結びつけるとっかかりがないため、髪を植えたあと裏から薄いPUの膜を貼り付けて固定してあります。この部分はベースが薄ければ薄いほど繊細で傷みやすい上に、この裏側の薄い膜が剥がれることでPU部分の抜け毛が起きやすくなってしまいます。

3. ほんの一部分だけ、抜ける

ウィッグやHRSの、ほんの小さな一部分だけ集中して抜け毛が発生する場合、きちんと洗えていないことが原因の一つとして考えられます。

ヘアワックスやムースを使用すると、特にレースやモノベースはその構造上、小さな穴と隙間だらけなのでそこに「脂分や栄養分に富んだ汚れ」として残ってしまいやすいのです。
その汚れに雑菌が繁殖し、タンパク質でできている毛髪を食べてしまい、抜け毛が起きることがあります。
ワックスやムースはなるべくベースに付けないよう、お気を付けください。手で塗るタイプではなく、スプレータイプの製品をご使用になるのも良いアイデアだと思います。

もう一つ、原因として考えられるのが「常に髪を一方向へ向けてセットしている」こと。
特定の部位に力がかかるため、その箇所の髪が抜けやすくなります。ヘアスタイルは時々、変えてみましょう。

抜け毛を防ぐための9か条

1. ウィッグやHRS(ヘアリプレースメントシステム)は完全に乾いた状態で装着してください。

濡れたままですと雑菌の発生や傷みに繋がりますし、そもそも頭皮に固定できません。

2. 目のあらい櫛(コーム)またはクッションブラシをご使用ください。

ロングヘアー、カーリーヘアーにはクッションブラシではなく、必ずコームをご使用ください。また、頭頂から髪をとかすのではなく、毛先から丁寧にとかしてください。

3. 頭を掻きたくなったら、爪で掻くのではなく指でポンポンと叩くようにしましょう。

ベースの傷みを防ぐことができます。

4. ウィッグやHRS(ヘアリプレースメントシステム)を洗う前に、全体を櫛で整えてもつれをなくしましょう。

洗うときにもつれてしまうと、乾いてもなかなか解くことができず、髪の傷みにつながります。

5. シャンプー、コンディショナーはラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸化合物を含まないものを選びましょう。

シャンプーやボディソープに広く使用されているラウリル硫酸ナトリウムほか、硫酸イオンを含む化合物は洗浄力が強く、ウィッグの毛髪やベースを傷める可能性があります。

ウィッグリリアのシャンプー、コンディショナーは硫酸イオンフリー、シリコンフリーの優しい製品です。微香性ですので、香りを周囲に振りまき過ぎることもありません。

ただし、WALKERボンドブレーカーシャンプーにはラウリル硫酸アンモニウムという硫酸化合物が含まれています。しかし、WALKER製の強力なグルーを使っている場合は、こちらを使う必要があります(下記の6をご参照ください)。洗髪後はシャンプーの成分が残らないよう、よくすすいでください。

6. 洗う前に、リムーバーでテープやグルーをできる限り落としましょう。

WALKER製のテープをご使用の場合はウィッグリリアリムーバー(WALKER純正よりもよく落ちますし、ヌルヌルしません)で取り去ってください。
WALKER製グルーをご使用の場合はWALKER製の適切なリムーバーでできる限りベタベタ成分を取り除いてください。

WALKER製のリムーバーは、ぬるっとした成分がウィッグや地肌に残ります。これはウィッグリリアのシャンプーではなかなか落ちませんので、WALKERボンドブレーカーシャンプーで落とす必要があります。

7. タオルドライをするときは、絶対に捻らないでください。

ウィッグをタオルで挟むようにして、トントンと叩きながら水分を取ってください。絞ったり、ねじったりすると、髪が傷んでしまいます。

8. 洗ったら、きちんと乾かしましょう。

必ずしもドライヤーを使う必要はありませんが、風通しのよい場所でしっかり乾かしましょう。生乾きのまま密閉して保管しないよう、ご注意ください。

9. 使用しないときは、平らな場所ではなく形を保って保管しましょう。

レースウィッグの場合はそれほど気にする必要はありませんが、HRSはマネキンヘッドなど頭のカーブを再現できる場所に保管しましょう。平たく畳んで保管すると、シワができたり元の形に戻らなくなったりすることがあります。


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